稲葉真弓さん(高20)が紫綬褒章を受章されたことに同級生の方からお祝いの言葉が寄せられましたので、ご紹介いたします。
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言葉の玉手箱
稲葉真弓さん、この度の紫綬褒章の受賞、誠におめでとうございます。
高校時代を共に過ごした私たちにとって、非常に嬉しく誇りに思います。それを祝い寄稿する事に成りました。
私が著書を拝読して感じた事は、豊かな表現と言葉の美しさに感銘を受けました。稲葉さんはきっと、言葉の玉手箱を持った人でしょう。そして、それを探れば稲葉文学を理解できるとずーと考えていて、ある時ふと思い至ったのが、うた(詩)でした。多くの文で綴られた小説の幾つかの行間に詩があり、宝石のように光輝いていました。その言葉の美しいと感じたところを、古里の水郷地帯を舞台にした新聞小説『還流』から2箇所読み取ってみました。
クーラーボックスにうなぎを入れ、同級生の3人がうなぎを放流するために蓮田を通り、河口へ向かうシーン
蓮田には厚みのある青い葉がひるがえり、そんな田のひとつに、蓮の花を切る人の麦わら帽子が右に左にとせわしなく動いていた。デルタ地帯特有のたっぷりと水をたたえた田や沼、夏草をはびこらせた水路などが次々と目の端をよぎっていく。
もう1箇所も、同じように蓮田のシーン
田には黄金に色づき始めた稲穂が波打っている。蓮田には青い葉がひしめいているが、いつしか全体に勢いが萎え、枯れかけた茶色の葉が固い和紙のように揺れていた。夏の間大きな花を開いては咲き、花弁を散らしていた蓮の花も花托が多くなり、茎の色が黒ずみ始めている。
まるで映画のワンシーンのように、状況を頭に浮かべ目を閉じると映像が映りだします。言葉の魔力の魔法にかかっているようです。
この作品は、水郷地帯を流れる川がテーマになっている。おだやかな川が時には伊勢湾台風のように大災害をもたらす。水は山から川へ流れ、やがて下流の木曽三川へそして海へと注ぐ。そんな川の水郷地帯に住むある家族(母娘3世代), 祖母、母、娘のかおりとかおりの2人の男友達を通して生き生きと綴られた人間模様が描かれています。
そして、この作品には、沢山の花が描かれています。花があり歌がある、歌があるからそこに花がある。ホタルブクロ ヒマワリ ハス 山桜 山吹 藤 かきつばた なでしこ 牡丹等々。そこで、この花の中から、春の花 一番豪華で大輪の花、牡丹を選び写真を添えてお祝いの言葉とします。改めて受賞おめでとうございます。
鵜飼 保(高20回)